日記的文章

おぼえがき、空想、その他いろいろ

最近見たもの読んだもの①

 9月~10月前半でたべたものの感想まとめ。

 ネタバレ配慮がいっさいないです。

 

●護られなかった者たちへ(映画)

 扶養照会はクソ!!!!!!! 現場からは以上です。
 ミステリ要素に目新しさはなかったのでミステリ期待して見に行くとそんなに面白くないかも。わたしは前情報なしに純粋なヒューマンドラマだと勘違いして見たのでミステリ要素がスパイスになっていて面白く見られた、けど事件の核にクソシステムこと扶養照会が噛んでいるのが気になってしょうがなく扶養照会考えたやつは懲役に処せ……という気持ちで途中から頭がいっぱいになってしまった……扶養照会さえなければ起こらなかった事件なので……。

 W主演といっていいのか、阿部寛佐藤健がふたりとも演技メチャウマでよかったです。阿部寛がさいご息子のことで「助けようとしてくれてありがとう」って言ったの表情の演技も相俟ってけっこうボロ泣きしてしまった。

 

●007 ノー・タイム・トゥ・ダイ(映画)

 じつは007をひとつも見たことないくせに付き合いでいっしょに見にいっちゃったんだけどこれ普通にシリーズで見たほうがいいですね。それはそう。と思ってこれ見たあとにカジノロワイヤル見ようとしたんだけど女とのイチャイチャシーンが長いし煩わしいしで見るのやめてしまった。スカイフォールが面白いと聞くのでそのうちチャレンジしたい。
 ピンチの時にキスシーン入れられると萎える人間なんだけど作り手サイドは大盛り上がりのつもりでそういうことしてくるので、付いていけずにあーあ……となること山のごとし。なに見ても思うけどピンチ終わったあとにキスしてくれ。もうキスできないかもしれないからするんだろうけど大抵そんなことしてる場合じゃなさすぎてそんなことしてる場合か? で頭いっぱいになっちゃってダメ。
 映画が、というよりボンドの様式じたいが時代遅れになりつつあるんじゃないかなあ……という印象がぬぐえなかった。カワイイおねーちゃんとすったもんだしつつスパイ活動するっていうのが……カワイイおねーちゃんとのあはんうふん部分がノイジーに感じる。最初のバイクアクションすごくかっこ良かっただけに……あの要素だけを純粋に見たいなと思ってしまう。わたしにはジョン・ウィックが合ってるみたいです。あと無印キングスマン
 メインヒロインが嫌いだったわけではないけど、パロマさんがメインだったら手のひら返してた。徹頭徹尾好みの問題。

 

阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし(文庫)

 四畳半だか六畳間だかに他人と暮らすのわたしは絶対無理なのでよくそんなことできるな……の気持ちがすごい。でも最終的にお隣さんになってたのすごくよかったな。友達のオタクと二階建てのアパートのお隣さんになりた過ぎる。人生の夢だよこんなもん。
 中華屋のおじさんが奥さんの遺骨ちょっと持ち帰って食べちゃった、てエピソードがすごく軽く語られていてかつ、姉妹のほうから不謹慎だとかなんだとか、逆にその行為じたいが尊い愛だとかなんだとか、そういったラベリングが行われなかったのが印象的だった。阿佐ヶ谷姉妹のこと実はよく知らなくて(あまりテレビを見ないので)、なにやらすごく歌がうまい芸人さんくらいの情報しかなかったんだけど、彼女らが人気あるのこういう感性の部分なんじゃないかなあとも思った。知らんけど。

 

●闇の左手(文庫)

 造語につぐ造語! 古きよきSF! 架空の惑星の現地人が一人称視点で語るもんだから、出てくるカタカナ造語が地名なのか概念なのかも最初判別つかなくて前半読むのがとにかく大変だった。両性社会の書きくちが考察的なところは楽しい。性行為が同意でしか起こりえない社会、理想的だ、こうあってほしい、としか思えないのがあらゆる意味で悲しい。人間の理性もっと頑張ってほしいよな。現実の話。
 前半読むのが楽しいところもあれどとにかくタルくて何度か挫折しかけたんだけど、盗み見したブックレビューで後半が面白いという評価がすごく多かったので頑張った。頑張ってよかった。後半はがっつり氷原のふたり旅。育まれる得がたい友情の描写、ここだけずっと読んでたいくらい濃厚で芳醇。寒いところであたたかいもの食べてる描写はいつ読んでもよいもの。
 エストラーベンがあまりにスッと退場するのでラストまでずっと受け入れられなかった……その場面の書きくちが改行のない怒濤の文章で、走馬灯みたいに見えて、その章のおわりはしばらく呆然としてしまった。雪崩に奪われる命のようだった。

 

君の名前で僕を呼んで(文庫)

 去年映画を見た。あのラストから続編がつくられる予定=原作とはオチが違うと聞いて待ちきれなかったので原作を読んだ。映画になった部分はエリオの一人称で、とにかく恋というか性欲の発露がすさまじい文章。思春期の少年がこっそり書いてる秘密の日記そのもの。こんなのわたし読んでもいいんだろうか……となる。映画のエリオはもう少し静謐な印象があったので原作はけっこう情熱的だったんだなあと思うなどした。わたしの映画感性が低いだけかもしれない。
 映画にならなかった・なっていない部分の愛の濃密さ、これ映像でも見たいな……一瞬の恋だけでなく、その後もつづく人生の話だったのだな。オリヴァーとエリオに対する気持ちが読み終わっても時間をおいてもまとまらなくて不思議。このふたりに結婚してほしかったとは不思議に思わないけど、オリヴァーが急に結婚するのはなんかふつうにひどいなと思うので別れるにしてももっとなんか……いやでも分かるんだよ、シャボン玉みたいなひと夏の夢、弾ける時期がその「ひと夏の夢」に隣接していればしているほど切なくていい味するもんな。わかるけどひどい。
 ふたりがおたがいをずっと愛していて、それぞれの人生のかたちが変わってもその愛が否定されることがなかったところがよかった。分かたれたレモンのそれぞれ異なる苦み。元は一個のレモンで、お互いがお互いそのものだったふたり。

 

●インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー(単行本)

 エドワード…………………………………こうなることがわからなかったわけでも察せなかったわけでもなくむしろ丁寧に丁寧に(この巻においてはクラレンスによって)伏線が張られてはいたけれども、それでもやはりそのときがくると、どうしてもこうならなきゃいけなかったか? と思うことをやめられない。
 アシュリーのキャラクタがよかった。手帳の執筆者である彼が現実の人物をも自分の手によって動かせる登場人物と誤認している物語の構造が楽しい。あとはもうほんとエドワード………………………………と呻くことしかできないので割愛。前二作とかなり読みくちが異なるので最初はちょっと戸惑った。味つけは同作者の「U」に近い気がする。

 

●零號琴(文庫)

 パロディSF……というのが正しいのかわからないけど、触れたサブカルが多ければ多いほどニヤッとできる構造のたのしい本だった。思いっきりプリ●ュアを出すな。
 飛浩隆が「都市を鳴らす」というとき、それすなわち「全部めちゃくちゃにします」宣言と思っているので期待どおり、期待以上の展開ににっこり。闇の左手に負けず劣らずの造語パレードだけど語り口が全編とおして口語っぽかったので読みやすかった。単行本より文庫のほうが合う内容であるような気がするので、イラスト表紙の文庫が出てうれしい。
 それにしても全編とおしてよくこんな世界を造形できるよな……想像力ってここまで自由になれるんだ、という意味で感動しっぱなしだった。生きた肉塊でできた書斎、役割を与える仮面、想像を糧にする夢のいきもの、無数の鐘に彩られる神話都市、このすさまじい想像の世界観をあますことなく表現できる文章力に圧倒される。食人のトラウマの秘匿や戦争の悲惨を体現した化け物などのギミックもまるごと楽しかった。こういう悪趣味が大好き。
 あと物語に対する考察も面白かったな。下巻120ページくらいにある「物語にある登場人物が苦しんでいるとき、その苦しみは物語や登場人物においてとうぜん本物なのだ」みたいなことが書いてあったと思うけど、あたりまえのことが書いてあるのになんかはあ~~~!! てなってしまった。ワンダがちょくちょく二次創作の持論を語るところは振り切りすぎてて笑ってしまう。いいんだろうかこんなこと書いて。

 
●燃ゆる女の肖像(映画)

 いい意味で眠くなるフランス映画。ことば少なで、うつくしい映像と果実みたいな演技が繊細にものがたる。主演ふたりがうつくしくて切り取られた画面がすべて絵画のようだった。ポストカードが欲しくなる画面づくり。
 島での生活は男性が意図的に廃されていて、見る私・見られる私の話と絡めて「男性の視線に晒されない女性の自由」を書こうとしているのだろうなと思う。扱うモチーフを限られている女性画家がこっそり描く恋人の女性のヌードが、のちの肖像画で秘密の暗号として登場する演出が官能的でぞくぞくした。だけどこんな風に隠れて微笑むのが精一杯である状況はなんも美しくないし、映画の側もたぶんそうと分かって撮っている手触りがあった……ラストシーンとか。属性にかかわらず愛するものを自由に愛せる世の中に近づきつつある現代であってほしいね。真面目な話になってしまった。オルフェウスの神話とふたりの別れの瞬間が重なったシーンで助けてくれ……と呻くなどしてしまった。君の名前~といい結ばれない同性カップルの話を立て続けに摂取してしまったな。なんのしがらみもないハッピーエンドも食べたいものだ。
 こういう古めかしい時代を描いた映像の素朴な食べ物が謎においしそうに見える現象に名前をつけてほしい。最初のパンとチーズとワイン、ぜんぜんうらやましい食事じゃないはずなのに「いいなあ」と思ってしまった。ジブリ現象かなあ(?)。

 

●違国日記 8巻(漫画)

 えみりちゃんが言った!!!!!!!!
 えみりちゃんの告白に対する朝の反応がずっとリアルで、その朝の反応に対するえみりちゃんの反応もリアルで、なんならえみりちゃんとまきおくんの交流にやきもち焼く朝の感情もリアルで、この漫画読んでるとずっと胃痛がする。人間観察力がすごい。
 「好きな人と結婚できるだけでいいのに」、そうだね、ほんとにそうだね……。現実憎しが高まるな。

 

●テイルズオブアライズ(ゲーム)

 いっこまえの記事参照。